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2006年06月12日
創作落語「逆さ三タテ」
毎度ばかばかしいお笑いを一席。旨い蕎麦を俗に称して「挽キタテ、打チタテ、茹デタテ」の「三タテ」なんぞと申しますが、それにわざわざ異を唱えたのが、毎度お馴染み、放蕩息子の六太郎。こやつ、子供の頃から近所でもへそ曲がりと評判で、両親が「右」と云えば「左」と答え、世間が「上」と云えば「下」と返し、ブライアン・メイが「シャーク!」と唄えば「ヘイ、マン!」と唄う――とまあ、事ほど左様に筋金入りの天邪鬼だったのでございます。そんな六太郎が名店と呼ばれる蕎麦屋に入ってまず一言――「チョイト店員さん、お前さんトコの蕎麦は旨いのかい?」普通こんな失礼な訊き方をする奴はございませんが、店員にしてみれば相手は大店の御曹司、無下に扱っては後が怖いとばかりに、ニッコリ笑ってこう答えます――「うちのお蕎麦は、挽きたて打ちたて茹でたてで、トオテモ美味しゅうございますよ」「ふん、旨い蕎麦は喰い飽きた。三タテなんぞはシャラクセエ。あたしントコにはその逆で、不味い蕎麦を持ってきておくれでないかい?」「と申されますと…?」「そうだなあ、まずは『挽きたて』これがいけない。石臼の周りにこぼれたお粉を掻き集めれば、丁度一人前ぐらいはあるだろう。それで作っておくんなさいよ」「ハァ…」「そうそう『打ちたて』これもよくない。蕎麦を打ったらまず一昼夜、天日に乾かし夜風に干してみてはどうだろう」「あのォ、そんな準備はしておりませんが…」「なんだい融通の利かない蕎麦屋だねえ。仕方がない、それじゃあ明日の今時分にまた来るから、それまでに準備しておくんだよ――アそうそう云っておくが、『茹でたて』なんぞは以ての外だから忘れないように」そう云い放って六太郎は帰ったのですが――。
今日、鶴見が行った蕎麦屋では、
昨日そんなやり取りがあったのに違いない。
そして、六太郎さん用の蕎麦を間違って出されたのだきっと。
それほど不味かった。有り得ないほど不味かった。しかも高かった。
二度と行かねえよヽ(`Д´)ノバーロー
投稿者 tsurumy : 2006年06月12日 00:26
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