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2006年06月22日

又も綴る「子供にゲームをさせよ論」のコト[中編]

「えー…皆さんお揃いでしょうか? ――それでは再開致しますが、最初に、休憩前にお話ししたコトを簡単におさらいしておきましょう。

「まず、TVゲームの気持ちよさの元は『脳の学習機能』である――これは、ちゃんと覚えておいて…というか、『学習』しておいていただけましたか?(笑) そして、脳の学習機能は、人間が人間である限り脳味噌に組み込まれているワケですから、TVゲームは年齢に関係なく面白いモノであり、裏を返せば『子供の脳だけを変質させるようなコトはない』、というコトもよろしいでしょうか。そこまでおさらいした上で、いよいよ『TVゲームは子供に悪影響を及ぼし得るのか?』というお話になります。

「さて、TVゲームというのは、云うまでもなく『娯楽』です。先ほどは『学習』と申しましたが、これは生活に役立つ学習とか、いわゆる勉強という意味ではなく、脳にとっての『学習反応』という意味にしか過ぎません。いくらゲームが上手くて…高い得点をあげたり、武器やモンスターを集めたりしても、ごく一部の例外を除いては、実生活では全く得になりませんね。なので、人間として生きていく為には、あくまでも社会生活が『主』で、娯楽は『従』となります。まあ娯楽とはそういうモノですよね。映画だってTVだって漫画だって小説だって、それには変わりがありません。

「では、もし…この社会生活と娯楽との『主従関係』が崩れてしまったら…逆転してしまったら、一体どうなってしまうでしょう? 娯楽に溺れた挙句、社会生活を営まなくなったら――これはもう、説明するまでもなく大問題になります。仕事もせずにTVばかり観ていたら、たちまち生活に困るコトになってしまいますし、部屋から一歩も出ないでインターネットに没頭していたら、それは『引きこもり』です。何にせよ、問題です。

「そもそも娯楽というモノの役目は、生活に活力を与えるコトにあるワケです。『社会生活との両立』が出来てはじめて、プラスの存在価値が生まれる…これはもう社会の常識中の常識だと云って良いと思います。逆に云えば、社会生活と両立出来ない娯楽は、『毒』と同じです。娯楽そのものが毒なのではありません。娯楽との『間違った付き合い方』が毒を生み出すのです。

「ここまで説明すれば、ワタシが『TVゲームは子供に悪影響を及ぼし得る』と云った意味が、お解りいただけたのではないかと思います。つまり、もしお子さんがゲームばかり遊んでいて――ゲームがお子さんの社会生活を過度に侵食してしまったとしたら、それは即ち『悪影響』と呼んでも差し支えないだろう、というコトです。我々ゲームの作り手も、お子さん達がそこまでゲームにのめり込むコトは、まったく望んでいません。

「しかし…『社会生活と両立する』これは大人にとっても案外と難しい。たまたま今、ワールドカップ・サッカーが開催されているワケですが、深夜までTV観戦していると、翌日の仕事がツラくてツラくてたまらない。まさに「毒」です。4年に1度、毒が身体に回ってしまうなんて、まるで流行り病みたいですね(笑)。とは云え、ワールドカップならまだマシです。だって、放送時間は決まっていますし、次のブラジル戦で負ければ終わりですし…いやいや、もちろん終わってほしくはないんですが(笑)、こればっかりは自分でどうこうするワケにはいきません。――ところがTVゲームは、ワールドカップ観戦とは違って…というか他の娯楽と違って、こうした『制限』とか『縛り』が極端に少ないんですね。

「まず基本的に、遊ぶ人間の意志で際限なく遊べてしまいます。この辺り、叱ってもなかなかゲームを止めないお子様をお持ちの方には、お解りいただけるでしょう(笑)。TVや映画などとは違って、終了時間が決まっているワケでもありませんし、漫画や小説などとも違って、大抵のゲームソフトでは、終わりになってもなお、何度でも繰り返し遊べる仕組みになっています。いや実は、これに関しては我々ゲームを作る側にも責任の一端がありまして――TVゲームは娯楽としてはお値段の高い商品なので、元を取っていただくためにも、なるべく長く遊ばせたい、飽きずに何度でも遊ばせたい…そう考えながらゲームを作っているワケなんです。まあ、短時間しか遊べずに、すぐに中古で売られてしまうと、その分の売上げが減ってしまって大変困る、というこちらの内部事情もあったりするんですが…まあそれは聞かなかったコトにしておいてください(笑)。

「そしてもうひとつ、こちらの方が遙かに重要なんですが…TVゲームの面白さは、脳にプログラムされた学習機能――云ってみれば『原始的』『原初的』な機能から生まれるので、面白さそのものが身体に…脳に『染みつきやすい』のです。『思い出しやすい』と云っても良いでしょう。

「例えば、同じように脳にプログラムされた機能に喩えてみれば解りやすいかもしれません。食欲・睡眠欲・性欲を三大欲望なんて云いますが、これらの本能はもちろん『脳にプログラムされたモノ』です。そして、この3つはどれも、気持ちよさを『思い出しやすい』。――ふかふかの布団にくるまって眠る気持ちよさなんて、どんな方でも間違いなく思い出せる『気持ちよさ』じゃありませんか。食欲・性欲については説明するまでもないでしょう。

「もちろん厳密に云えば、これらの『本能に基づく快感』と、TVゲームの『学習機能による快感』とでは、脳味噌の中での反応部分も、重み付けも、随分違うのですが、『気持ちよさを思い出しやすい』という点においては、程度の差こそあれ同じです。そして、気持ちよさを思い出しやすいから…やり続けたい…もう一度またやりたい…こう思いがちなのは、至極当然です。眠りたい…眠り続けたい…美味しい物を食べたい…お腹いっぱい食べたい…ヤリたい…もう一度またヤリたい――って、なんだか猥談になってしまいそうなんで、この辺にしときましょうか(笑)。なんにせよ、TVゲームの面白さは脳に染みつきやすいので、遊ぶ人間は、そのまま遊び続けていたいと強く思ってしまうワケです。


「――ここまでお聞きいただいて、なんだか『子供にTVゲームを止めさせる』コトが、相当困難な、一大事業のような(笑)印象を受けた方もいらっしゃるのじゃないでしょうか。殊に、ご自分ではゲームを遊ばれない方は、想像のしようがなくて、どうすれば良いのかまったく見当がつかないだろうとお察し致します。

「でも実は、『TVゲーム』にまつわる活動というのは、人間の『とある行動』に似ていたりするんですね。ゲームを遊ばれない方も含めて、皆さんが絶対にご存知のはずの『とある行動』に。――人間にプログラムされている現象で、快感を伴い、うまく社会生活と両立すれば薬…活力を与えてくれるけれども、溺れてしまうと毒にもなってしまう『行動』――それは『恋愛』なんです。しかも、プラトニックなモノではなく、身体の関係もアリの『大人の恋愛』ですね。最近では、高校生でも肉体関係のある恋愛が珍しくないそうですから、その辺りを想像していただければ良いでしょう。念の為云っておきますが、これは猥談なんかではありませんよ。

「恋愛についてだったら、ゲームをご存知でない方でも、皆さん間違いなく経験がおありじゃありませんか?(笑) 『TVゲームにハマる構図は、大人の恋愛と似ている』。これは大胆な発言のように聞こえてしまうかもしれませんが、実はそう喩えると、色々なコトが理解しやすくなるんですよ。――では、これから2度目の休憩に入りますので、その後で、この大胆発言を元に、親御さんがTVゲームにハマったお子さんに対してどのように対応すべきか、鶴見の考えをお話しするコトにしましょう」

カテゴリー: 新・嘘六百

投稿者 tsurumy : 2006年06月22日 04:43

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