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2004年04月02日

嘘六百・第47回

今回は久しぶりに、セガ時代の昔話でもする事にしよう。

あれは1993年頃の事だったろうか。まだ私が1研(当時)の企画課に所属して、アーケードゲームを作っていた頃の事だ。以前にも書いたが、私は喫煙室に筆記用具一式を持ち込んで仕事をするのが当たり前な程の不良社員だったので、喫煙室に出入りする人間とは部署を越えて仲良くなっていたものだった。

そんな「喫煙室メンバー」の一人に、隣の部署、すなわち鈴木裕さんの下にいる若手企画マンがいた。私より1年後輩で、「企画を必要としない超プログラマ集団」と噂されていた裕さんの部署に、初めて企画として採用された切れ者――のはずなのだが、見た感じはそんな雰囲気を微塵も感じさせない、タレ目で感じの良い、悪く云えば要領の良さそうな若者だった。彼は煙草は喫わないのだが、喫煙室で日夜交わされるフリートーク(という名の「バカ話」)に参加するため、休憩の度に訪れていたのだろう。


喫煙室である日、彼は私に、こんな相談を持ちかけてきた――「MCハマーでゲーム作りましょうよ!」。

ちょっと説明を要するのだが、MCハマーというのは、今でこそすっかり忘れ去られてしまったが、当時は非常に人気の高かったヒップホップのミュージシャンだ(なんでも今は宣教師をやっているらしい)。そのMCハマーのキャラクターライセンス版権をSOA(セガ・オブ・アメリカ)が取得したので、日本でも作らないか、というオファーが来たのだ。

彼は、マイケル・ジャクソンのゲームを作った私の経験に目を付けたのだろう。それは正しい。彼と私は喫煙室でブレストを重ね、こんなゲームの企画をまとめたのだ――アップライト筐体に、シンセドラム用のパッドを付け、それを叩いて操作するゲーム。流れる曲のリズムに合わせて叩けば、画面上のMCハマーが華麗なダンスを披露するダンスゲーム――そう、今で云う「リズムアクションゲーム」だ。

しかし――我々のプロジェクトは日の目を見なかった。手の空いているデザイナーに筐体のイメージ画を描かせ、コスト計算をし、OHP資料を作って、社長プレゼンまでやったのだが、我々のプロジェクトにGOサインは下りなかった。

私は、彼――現SEGA-AM2社長の片岡と共に、「こんな事もあるさ」と、上層部の頑なさを愚痴り、各々が別の仕事に戻っていったのであった。


で、ここで話は唐突に現在に飛ぶのだが、来週のGame Developers Choice Awardで、おなじみ松浦雅也さんが、革新的なゲームで業界に貢献した事に対して贈られるFirst Penguin Awardを受賞する。もちろん、パラッパラッパーで「リズムアクションゲーム」というムーブメントを産み出した業績が評価された訳だ。

私も選考委員の一人として投票したし、松浦さんの業績にけちをつけるつもりはない。だが、もしあの時、MCハマーのゲームがプロジェクト化されていたら――そんなIFを考えながら投票した鶴見なのであった――。

えー、今回のイラストは、ワタシが描きました。理由は、イラスト中に書いた通り。

uso47.jpg
しまった! 「イエーイ」って入れるのを忘れてた!!(汗)

今回は、〆切間際に原稿を入れたものだから、エノモトさんの方にしわ寄せが行ってしまったのでした。

本当に申し訳ありませんでした>エノモトさん
イラスト中にも書きましたが、今度オゴりますから。

投稿者 tsurumy : 2004年04月02日 06:00

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