« 『それは「ポン」から始まった』読了して思ったコト(1) | メイン | 新世代のXaviXPortのコト »

2005年10月31日

『それは「ポン」から始まった』読了して思ったコト(2)

「業務用を軽視してビデオゲームにエポックが生まれるのか?」

まあ実際生まれていないワケではないが、生まれ「にくい」コトには間違いなかろう(つうか、鶴見は作る側なのに、こんな他人事のように云ってしまっていいのか…汗)。「ムシキング」も「DDR」も、「ストII」ですらも、家庭用ゲーム機からは生まれ得ないモノなのだ。

家庭用機が「プラットフォーム」である限り、打ち破りづらい「枠組み」が当然ある(まあそれこそが、大きな商売を可能にする「規格」ではあるのだが)。中でも比重が高いのは「コントローラ」だ。先日のTGSで、任天堂が文字通りレボリューショナルな「レボリューション」用コントローラを発表して世間を驚かせたコトは記憶に新しいが、あれほどの「社運を賭けました」的なスタンスでしかコントローラを改革出来ないトコロに、家庭用プラットフォームの不幸(ひいては、ゲーム業界の不幸)があると思う。

もちろん、別売りペリフェラルとして新しいコントローラを用意するのもアリなのだが、「アイトーイ」「カードeリーダー+」の例を引くまでもなく、商業的な成功を目指すにはハードルが高すぎる。ゲームの価格を大きく引き上げてしまい、それ自体が商業的失敗の原因になりかねないからだ。いわずもがなだが、量産効果によってコントローラ自体の価格を下げるためには、そのコントローラに対応したソフトを数種類用意しなければならない。よって必然的に、大きなプロジェクトになってしまう。これまた「社運を(ry」だ。

かたや業務用。ゲーム価格の内、コントローラの占める割合は相対的に低いので、自由度ははるかに高い。一企画者が企画書に「特殊コンパネ(Control Panel)使用」とか書けちゃう。余談だが、初代「SHINOBI」には、当初「手裏剣コンパネ」を使う計画があったという(ロケテストまでやったそうな)。もちろん、社運なぞかける由もない。世間には多種多様で安価な汎用部品が溢れているので、ゲームに合わせて最適化するのは、思いの外、カンタンなのだ(もちろんハードルがないワケではないが)。


ビデオゲーム娯楽における快感の中核を為すのは、もちろん「判断(操作)-褒賞」のフィードバックループ(世間でいわゆる「ゲーム性」がコレ)であり、インターフェースとゲーム性というのは不可分の関係にある。ゲーム性ウンヌンを云う上で、インターフェース=インプット/アウトプットの内、アウトプット(映像)を進化させながら、インプット(コントローラ)を旧態依然に置いておくのは、片手落ちもいいとこだ。そうした意味からも、DS・レボリューションと続く、任天堂の「コントローラ改革」の方向性自体には、大いに賛意を示す。

だが、インターフェース(コントローラ)がゲーム性と不可分ならば、プラットフォームメーカー一社が(社運を賭けて)最大公約数的に提供する1つのモノよりも、ゲーム制作者自体がゲーム毎にデザインする多様なモノの方が、ゲーム性を進化させる可能性は、遙かに高い。もちろんそれが可能なのは、業務用だけだ。やはり、業務用ゲームの凋落と、「最近ゲームがつまらなくなったよね論」との間には、構造的に因果関係が存するように思えてならない。

業務用TVゲームは家庭用に比べると、何かと不利な環境や立場に置かれることが多いが、業務用が先頭を切ってTVゲームの地平を開いてきたのは、プレイヤーがやってみて面白くなければ撤去されるという、厳しい環境の下にあるためである。(それは「ポン」から始まった・あとがき)

なんだかまた、業務用ゲームを作りたくなってきたよ…。

(まだ続く)


【追記】
インターフェース(コントローラ)について書いているうちに、またフツフツと茹だってきた。

何度でも書くが、ゲームメーカー各社がモバイル市場へ重心を移すのは、目先の利益に釣られて自死へと向かっているように思えてならない。なぜなら、モバイル端末(携帯)は、ゲーム業界外の手によって、ゲームのコトを考慮せずに設計されたモノだからであり、端的に云ってインターフェース能力が低い=ゲーム性も低くせざるを得ないからだ。

なぜゲームというモノがここまで市場価値を持つに至ったのか。もちろん、脳味噌を発火させる「ゲーム性」故であり、ゲームでしか得られない「ゲーム性・体験」があったからだ(広義にも、狭義にも)。ショボいボタンで操作して、サウンドもなく、60分の1秒のインタラクティヴィティにも欠ける携帯ゲームに、それほどの価値があるとは思えない。

ゲーム性の低いサブセット版は、ゲーム体験への呼び水にはなるだろうし、あるいはゲームIPを使って小金稼ぎこそは出来ようが、それをメインストリームにしようと考えている愚かな方々は、ゲームセンターの店員でも2~3ヶ月やって、考えを改めてほしいものである。

カテゴリー: 新・嘘六百

投稿者 tsurumy : 2005年10月31日 21:10

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.0600design.com/mt/mt-tb.cgi/186

コメント

僕も買いました。上月さんとスクランブルの下りを読んで長年の謎が解けましたW いやすばらしい本ですね。

投稿者 おのけんじ : 2005年10月31日 23:48

タイトルが「ゲームの華はアーケード!!!」ではない件について(^^)

投稿者 TOMY : 2005年10月31日 23:49