« 嘘六百・第28回/「ある制作者の挫折と転落」(完) | メイン | 嘘六百・第30回 »

2003年07月25日

嘘六百・第29回

今回は、昔の上司・小口さんがセガ社長に就任するから、彼に関する裏話で行こうと思ったのだけれど、あまりに危いネタ過ぎて、なんと編集長からストップがかかってしまったらしい。えー、マジかよウメちゃん?(編・マジだよ)

もう今から別ネタを準備する時間はないので、今回は(いちばん早く書ける)自分の仕事について書こうと思う。題して――

「キャラクター台本の作り方」


私は「イタコ系台本書き」と呼ばれている。台本を書く時には、恐山のイタコが霊を降ろす様に、自分でなりきりながら書くからだ。ヒーローも相棒も、ヒロインも、ジジイも、ニヒルな大男も、悪役までも、すべて声音を使い分け、小声で大声で甘い声で厳しい声で断末魔の声で――自分で云うのも何だけど、かなり「命を吹き込」んで、書いているつもりだ。

――客観的に考えると、オフィスの同僚にとって迷惑千万な話なんだけどね(笑)。まあ内部の人間には「季節の風物詩」として認知されてきた感があるけれど、さすがに先日、外部の人に台詞を聞かれた時はヤバかった。だって、聞かれた台詞が、よりにもよって、

「脱毛した毛でカツラも出来ちゃう、それが特許の新機能!」
(テレフォンショッピング口調)

なんだもの! 一体どんなオフィスだと思われたのやら(笑)。

――そこまでして書いている台本でも、これじゃあまだ「キャラクター」じゃない。云ってしまえば、単なる「面白トーク」。台本上で表現しているキャラクター性を、自分の声では十分に引っぱり出せないし、なにより、「自分の『意識』しているキャラクター性しか表現できていない」からだ。

なのでその台本で音声を当てる時は、音声収録ディレクターを別に立てた上で、声優さんに演じてもらっている。自分で声優さんに指示する事も出来なくはないけれど、それは敢えて避けている。スタジオの中で、声優さんとディレクターという「他者」を交えて、試行錯誤しながら音声を作ってこそ、スタジオの中でまさに「世間に向けたキャラクターが産まれる!」のだ。

実感として、「自分が無意識の内に台本に込めた意味」まで、ディレクターさんと声優さんから、引っ張り出されていく感じ。
「ああ、俺はそういう意味で、この台詞を選んでいたのかぁッ!?」と。

思うに――「キャラクター」あるいは「物語」というモノは、多くの人の無意識に訴えかける要素が不可欠だ。昔のゲームの様な極めて記号性の高い(情報のバンド幅が狭い)表現形式ならば、プレイヤーの裡でゆっくり醸成されていった部分も、ブロードバンド時代の今は(笑)、最初から取り込んだ形で表現しないと見向きもされない。

そういう意味で、私が関わっているタイトルは日米欧のコラボレーションによる物なので、日本市場に向けて速効的に使える流行りネタ(メイドとか妹とか巫女とかナースとか…)が入れにくい分、今回書いたような方法によって無意識を取り込む作業が不可欠だという訳で、だから――

うるさくても許してね>同僚の皆さん

忙しくって忙しくって、原稿落とす寸前まで逝ってしまった。

というか、小口さんがセガ社長に就任するのに合わせて、表に出ない「ギャンブラー小口」の真実を書こうと準備してたら、またもや編集長ストップがかかってしまったのだ。

曰く「株主総会で追求されでもしたら、シャレにならん」
――のだそうな(まあ、スモールアナルでございますわね)。

そこで今回は苦肉の策として、出入りしている掲示板への書き込みを手直しをして、そのまま掲載してしまったのであった。うーむ末期症状であるなあ。

投稿者 tsurumy : 2003年07月25日 06:00

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.0600design.com/mt/mt-tb.cgi/50