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2003年06月27日

嘘六百・第27回/「ある制作者の挫折と転落」(4)

1994年、春。完全に壊れてしまっていた僕は、スターウォーズ・プロジェクトの終了を機に、セガを辞めようと考えていた。

と云っても、ゲーム一筋に進んできた僕が、ゲームを作る以外に出来る仕事などあるはずもない。少なくとも、500万以上の莫大な借金を返せるだけの稼業なんて思い浮かびやしなかった。

――失踪か、自殺か。

心療内科通いのおかげで、鬱「病」と云える峠は越していたけれど、いまだ抑鬱状態に悩んでいた僕は、その2択を前に呻吟する毎日だった。

ところがそんな折り、コンシューマ(家庭用)の石井副本部長(現アートゥーン社長)に退社の相談をしたところ、思わぬ申し出を貰ってしまった――「辞めるぐらいなら、コンシューマでラクしに来なよ!」。僕は、最後のご奉公のつもりで、コンシューマに移籍した。

コンシューマでは、既にスタートしているプロジェクトのディレクターを任された。横スクロールのアクションで、元々メガドラ用に進んでいたタイトルを、デビュー間近のサターンに焼き直すに当たって、経験者の立場からプロジェクトをスーパーバイズして欲しいとの由。

ゲーム創りの情熱は、僕の裡からすっかり消え去ってしまっていたけれど、ゲーム作りのノウハウ自体は身に付いていたので、何とかやっていけるかもしれない、そんな想いから、最後の命綱を握った僕だった――。


今、「輝水晶伝説アスタル」というタイトルを記憶している人間がどれ程いるだろう?

――そう、商業的にはプロジェクトは成功しなかった。一部の声優ファン以外には黙殺された格好だ。でも失敗でもなかった。少なくとも僕にとっては。

確かにプロジェクト初期の頃には、最後の命綱の上を危ういバランスで渡っていたのかもしれない。家に転がり込んできた女のコの身体に溺れて、仕事上の無力感を男性的征服感で贖おうともしたし、友人連中に「30歳の誕生日に自殺するから、誰か俺の生命保険に一口乗らない? 保険金で配当するよ。〆切は1年前の29歳の誕生日ね」と公言して自己憐憫的センティメンタリズムに浸ったりもした。

でも、やはり僕を癒してくれたのは、素朴な「物作りの感動」だった。

アスタルが完成に近づくにつれ、日々のちょっとした達成感が陽射しのように、僕の抑鬱感を溶かしていった。BGMはビートルズの「Here Comes the Sun」。

冬が終わり、1995年の春がやって来ていた――。


アスタルが終わった後、今度は本当にセガを退社した。

もう鬱からは解放されていたけれど、純粋に身体が休息を欲していたからだ。僅かながらの退職金を握って、愛車RX-7カブリオレで全国の温泉を巡り、夜は高速道路のサービスエリアで車中泊。たまに友人宅へ転がり込み、遊び歩く毎日。そういえば、榎本さんと出会ったのもこの頃だったっけ。

そんな生活を5ヶ月程続けて退職金が尽きようとしていた頃、元BEEP編集長・川口さんの紹介でSCEの門を叩いて――。

TO BE CONCLUDED!(次回完結)

いやーアハハ、この前の回の原稿、見事に落としちまったよ。ちょうど〆切がE3直前で、書く時間が取れなかったのでした。これで見事に予定が狂い、当初書こうと思ってたE3レポートは書けず終い。

ホントはこの回で終わらすつもりだったんだけど(内容的にはそうだよね)、「鬱を解消できた理由と、500万の借金がどうなったかは、必ず書くコト!」という、編集うめちゃんの強い要求により、もう1回だけ書くコトに。ほら、落とした回の代原を書いて貰った身だから、従わざるを得ないワケで(笑)。

ちなみに最後の「TO BE CONCLUDED!」という文言は、そうです、その通りです、E3出張の時に観た「MATRIX RELOADED」から取りました。
さすが、エノモトさんはスゴイ(講談社アッパーズ「映画でにぎりっ屁」参照)。一言だけで解ってくれて、イラストも「TSURUMIX RELOADED」だって。
うーむ、まさに「映画愛」。微妙な文章も、拾う拾う(笑)。ドリマガ本誌では、中村る~しあとかいう輩が、知識も理解力も画力も無しに映画コラムを描いていて、たまに失望させられるが…こういう「愛」あるイラストを見るとはげみになりますなあ。うむうむ。

タグ: セガ

投稿者 tsurumy : 2003年06月27日 06:00

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