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2003年04月11日

嘘六百・第23回

 前回、「遅刻罰金制度」という言葉を書きましたが――この連載を読んでいるゲーム開発者の皆さん! 特に、チームメンバーの遅刻でお悩みのディレクター/プロデューサーの皆さん! 「遅刻罰金制度」を導入してみませんか? 色々とオイシイ事があるんですよ! それは何かというと――。


 今は知りませんが、私が所属していた頃のセガでは「スーパーフレックスタイム制」という勤務制を採っていました。

フレックスタイムを御存知ない方の為に説明すると、「コアタイム」と呼ばれる一定の間だけ会社に居れば、その日は出勤したと見做される制度です。開発では10~15時の5時間がコアタイムでした。つまり、早朝に来て15時に帰るのもアリなら、朝10時に来て15時に帰るのもアリ。その上「スーパー」の冠は伊達じゃなく、1ヶ月の規定労働時間を超えて残業した分は、振替えて休む事も出来て――あるいは、丸々給料に上乗せする事も出来たのです!
 私も忙しい時分には200時間近く残業していたので、休む場合でも有休を全く使わずに振替休日で好きなだけ休み、休めない時は全額お金に換えて――入社2年目なのに、手取り給料が50万弱なんて事もざらでした!

 どうです、夢のような勤務体系でしょ?

 でもね、今考えると、スーパーフレックスって諸刃の剣。とても素人にはお勧めできない。とにかくプロジェクトがダレるんですよ。

――まず第一に、仕事密度が薄くなる。そりゃそうです、会社に居るだけで高給取りになれるんですから。集中すれば日中に終わるような仕事でも、泊まってしまいがちになります(すいません、私もそうでした…汗)。

その結果――第二に、勤怠感覚がマヒ麻痺してきます。
「遅刻してもいいや、泊まってやれば」
 午後イチ出社ならまだましな方で、夕方出社、深夜出社(!)なんて人間も居たほどです(すいません、私もそうでした…汗)。独りきりの仕事だったら問題ないんでしょうが、ゲーム制作はもちろん集団作業。一般社会生活を営む他メンバーにとっては、コミュニケーションのロス以外の何物でもありません。云うまでもなくこれは、ボディブローのようにゲームのクオリティをじわじわと落とす「致命的なクソゲー力」の一つです。

 私は、あるプロジェクトから「遅刻罰金制度」を導入することにしました。自分の事は棚に上げて。机の上に、「ナニワ金融道」の貯金箱をドンと置き、遅刻1時間につき千円を徴収する事にしたのです。

 その結果どうでしょう! 遅刻が――実はまったく減りませんでした(汗)。でも、PJ中盤で「妙に貯金箱が重いな」と思って開けてみたところ、なんと20万近くも貯まっていたんです! ナニワ金融道の御利益でしょうか?(笑)
勿論これを使って、PJメンバー全員で飲みに繰り出しましたとも。超豪勢な親睦会!――20万円=200時間のコミュニケーション・ロスを埋めるために。


教訓:遅刻罰金でメンバーを和ませろ!

 数ヶ月後の打ち上げも豪勢でした(笑)。

連載誌面では、スペースの都合から、セガの昔の勤務制度に焦点を当ててみたけど、ここでは、遅刻罰金制度の「真の意味」について、ちょっと補足しておこうかね。

上に立つ人間がだらしないと、プロジェクト全体の士気(モラール)が落ちるんだよね。なんでもナアナアで済ませられちゃうような、真剣味の欠如が、澱のように溜まって。んで、その澱こそが、クソゲー力を生む核となり、プロジェクトがどんどん澱んでいく。

ところが高額の遅刻罰金を課すると、そこに「禊(みそぎ)」の効果が生まれる。
「奴はダレてるけど、その分、罪を償っているんだ」ってね。
これが、クソゲー力へのカウンターフォースとなって、プロジェクトの澱みを防ぐワケ。

前回、大場さんが遅刻罰金制度に加入していたコトについてチラっと触れたけど、別プロジェクトにも拘わらず、この制度に加入していた人も多かった。大場さんなんかは賢かったから、この「禊」効果を狙っていたんじゃないかな?いずれにせよ、この制度はかなり「使える」ので、皆さん使ってみてくださいな。

ちなみに、これを管理職が強制すると、下手すると労働基準監督署に訴えられちゃうから、くれぐれも、下の人間の発案で、プロジェクトメンバー全員が自発的に行う形にしておいてね(笑)。


そういえば、この回の原稿は遅れに遅れて、エノモトさんには迷惑かけました。そしてエノモトさんの画稿も遅れに遅れて…うめちゃんに遅刻罰金払うべきか?(笑)

タグ: セガ

投稿者 tsurumy : 2003年04月11日 06:00

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